セニングは本当に悪者?カット技術と道具の誤解
美容室でよく聞く、「セニング(梳きバサミ)を使う美容師は下手?」というウワサ。
SNSや口コミでも話題になるこの疑問、実は多くの誤解が含まれています。
セニングを使うと髪がパサつく、量感調整が下手になる……そんな噂の真相を、美容師目線で本音で語ります。
ハサミだけで切る美容師=技術が高いという印象は本当に正しいのか?
この記事では、道具に対する誤解、技術の本質、お客様の満足度について、わかりやすく解説します。
セニングを使うのが怖い…そう思っている方にこそ、ぜひ読んでほしい内容です。
セニングを使う美容師は下手?本当にそうなの?
2000年代に入った頃から、ドライカットやハサミ一本で仕上げるといった言葉が注目されるようになりました。そして一部の美容師の間では「セニング(梳きバサミ)を使うのは下手な証拠」といった極端な主張が見られるようになりました。
さらに、そのような技術が雑誌やSNSなどで持ち上げられることで、「ハサミ一本で仕上げる美容師=上手い」と信じるお客様も増えてきました。
セニング(梳きバサミ)を使う=下手?ハサミ一本=上手?という誤解
まずは私個人の意見として結論から言いますと、セニング(梳きバサミ)を使う美容師さんが下手で使わない美容師さんが上手という事はありません。セニングを使用していてもカットがすごく上手い方や、ハサミ一本で仕上げてもカットが下手な方もいます。
お客様が「セニング(梳きバサミ)は使わないで」と言う理由
実際にあるオーダー:「セニング(梳きバサミ)は使わないで」
現役美容師の私も、日々のサロンワークでこんなことをオーダーされる場合があります。

初めまして〇〇様。本日はカットですね?やりたい感じは決まっていますか?

やりたい感じはこんな感じなんですけど。できればセニング(梳きバサミ)は使わないでほしいです。
もちろんこういった場合に私は何故セニング(梳きバサミ)を使わないでほしいのかを聞くようにしています。理由は様々ですが、特に多い理由の一つがセニング(梳きバサミ)で梳かれすぎた(軽くされすぎた)というものです。
このセニング(梳きバサミ)で梳かれすぎたという理由と、美容師側がよくPRしているハサミ一本で丁寧にカットのような耳障りの良い言葉が合わさりハサミ一本で仕上げる美容師さんが上手という認識に至ってしまっているのではないかと思います。
美容師さんの技術に制約をかける場合は注意も必要
もしもカウンセリングの際に美容師さんの技術や道具に制約をかける場合は注意も必要ですので、下記の記事も参考にしてみてください。
セニング(梳きバサミ)は本当に髪をパサつかせるのか?
セニング(梳きバサミ)の悪いイメージとしてセニング(梳きバサミ)はパサつくという事があります。これははっきり言って事実ではありますが、セニング(梳きバサミ)だからパサつくわけではなく、ハサミ一本で髪の毛の中間部を軽くなるようにカットしてもパサつきは出ます。
もっと言えば髪の毛との相性もあります。セニング(梳きバサミ)だろうとハサミだろうとパサつきやすい髪質(ダメージ等も含め)の方はパサつきます。
反対に、セニング(梳きバサミ)だろうとハサミだろうとパサつきが出にくい髪質(ダメージ等も含め)の方はパサつきにくいです。
さらに言うと、セニング(梳きバサミ)だろうとハサミだろうと、入れる位置や、量によってはパサつきがどちらも出ますし、逆に入れる位置と量によってはどちらでもパサつきは出にくいです。
美容師のカット技術とは何か?道具ではなく結果で判断を
カットの“上手い・下手”は誰が決める?4つの視点
そもそもカットの上手い、下手というのも極論は主観になってしまうので
- 美容師から見ても上手で、一般の方から見ても上手
- 美容師の目から見ると上手だけど、一般の方から見ると下手
- 美容師の目から見ると下手だけど、一般の方から見ると上手
- 美容師から見ても下手で、一般の方から見ても下手
という4つのパターンになってきます。当然、1が一番良くて、4が一番良くないですよね?
間の2と3は選ぶ人によって違ってきます。
道具よりも大切なのは「お客様の満足度」
セニング(梳きバサミ)を使おうとハサミ一本で仕上げようと何よりも大事な事は仕上がりの満足となります。
美容師側に満足でセニングは悪だと決めつけず、目的達成の為に自分のパフォーマンスを最大限発揮できることができればどちらでも良いと思います。
カリスマなんて少し古い言葉を使いますが、世の中には
- ハサミ一本で切るカリスマ美容師
- セニング(梳きバサミ)をガンガン使うカリスマ
- レザー(髪の毛用のカミソリ)のみで素敵なスタイルをつくるカリスマ
もいます。
さらには世界に目を向ければ、
- 包丁でカットする
- 火で炙ってカットする
- 目隠しをしてカットする
- 踊りながらカットする
なんて方達も本当にいます。
大切なことはその道具を使うから上手いではなく。その道具を使いこなしてお客様の希望を叶えるから上手いという事だと私は考えております。
絵に例えると分かる、道具の上手い・下手という誤解
最後に一つ例を挙げてみましょう。ここで例えるのは絵です。絵には水墨画や、水彩画、油絵、版画等、様々な絵があります。
例えばあなたが動物の絵をリクエストしたとします。様々な画家の方が、水墨画や、水彩画、油絵、版画等で動物の絵を描いてくれました。
もちろん画家の方達はみんな絵が上手です。誰がみても上手な動物をそれぞれ描いてくれました。しかしここで油絵を描く人が一番上手だ!!水墨画なんて下手くそが描く絵だ!!とはなりませんよね?又は、筆を使って書くなんて下手くそだ!!指で繊細に描くのが上手だ!!
なんてなりませんよね?大事なことはどの道具を使っているかではなく、希望のスタイルにするために必要な道具を使いこなしているかということになるのです。やはり絵の場合でも、この道具を使うから上手い、この画風だから上手い、というように優劣の基準は自分の主観となり結果見た人次第となるのです。
まとめ:セニング(梳きバサミ)を使う美容師は下手?その答えは…
結論として、セニング(梳きバサミ)を使うから下手、使わないから上手という考え方は誤りです。
セニング(梳きバサミ)でパサついた経験がある方もいるかもしれませんが、それはセニング(梳きバサミ)そのものではなく、使い方の問題。
髪質やダメージ度合い、そして道具の使い方によって仕上がりは変わります。
カット技術の上手い・下手を決めるのは、道具ではなく、最終的な仕上がりとお客様の満足度です。
「ハサミ一本だから安心」「セニング(梳きバサミ)を使うから不安」と決めつけるのではなく、美容師との信頼関係とカウンセリングでのやりとりを大切にして、自分に合った美容師さんを見つけていってくださいね。